愛狂しい。

国語の授業で「想像力をはたらかせて」という授業がありまして、
4枚の絵から想像して、ストーリーを考える、
という、私の天下な授業がありました。
今回は、その授業で作ったお話を。





それは、今にもおちてきそうな空をした冬のこと。目の前にあるプレゼント、中身は何か分からない。だが、このプレゼントが3人を狂わせることになる。


名前どおり、白い肌をし白いマフラーをした紗雪は、雪など解けてしまうほどに恋をしていた。裕介の甘い仕草が、人の手では到底描けない曲線で構成された顔立ち、姿が、まぶたの裏に印刷されたように離れない。
伝えたくてしょうがない気持ちを、プレゼントと共に裕介に伝えた。裕介は答える。「他に好きな人がいるんだ…。」


裕介は春香のことが好きだった。いつからだろう。ただ昔っから、気づいたときには春香は裕介の特別だった。
もどかしい気持ちともらったプレゼントを抱えて家に帰る。
「あ、おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま、春香」
妹に恋するなんてどうかしている。分かっている。
だが、気持ちに嘘をつくと、気がどうかしてしまう。
「お兄ちゃん、そのプレゼント誰から?」
「ん、紗雪から。…悪いからさ、これ春香から紗雪に渡しといて。
 …なぁ、春香はさ、好きな人とかいるのか?」
「…私は……」


春香にも好きな人がいた。偶然にも、今日想いを伝えようとしていた。
「私、あなたのことが好き。あなたがずっとずっと隣にいてほしい。
 だから、私と付き合ってください。
 ……ダメ、かな。…紗雪」
紗雪は思ったとおり、体中で信じられないと言っている。
「えっと…、私たち女子だし…あの…、
 ごめん、私…、裕介のことが好きで……」
いつも思う。怒ったり泣いたり困ったり、ギリギリの状態の紗雪の顔は、とびっきり可愛い。今まで、紗雪が可愛いときは春香が頭をなでなでしてあげていたのだ。だから、今までしてきたとおり優しく近づくと、紗雪はガチガチだったであろう体を、春香から一歩遠ざけた。
「ごめん、春香…私…、裕介君が好きで…、
 あの…、ごめん、本当にごめん、春香……」
「可愛いよぅ…紗雪。男子なんて乱暴だよ?野蛮だよ?
 だから紗雪ィ…、私と一緒に…、私のものになろう?」
紗雪は、引きつった顔をブンブンと横に振る。
「そっか、しょうがないね…。本当はね、こんなことしたくなかった…」
春香は、していた赤いマフラーを抱いて涙を流す。そして、恐怖で動けなくなった紗雪に近づき、マフラーでグッと首を絞める。
「…っっ!…お願い、春香…、私も好き…。
 だからごめん…許して…」
「えへへ、ありがと…。私も大大大好き…。」
やっぱりだ。苦しそう。ギリギリの状態の紗雪は、いつもよりもっと真っ白で、ガラス細工みたいにもろそうで、どうしようもなく可愛い。
この顔は、男子になんか見せてやんない。


ぐわん、と首が垂れる。
白いマフラーを、自分に似合うか確かめてみる。
赤いマフラーの可愛いオブジェの頭をなでなでする。
まだ柔らかい唇にキスをする。


今にも落ちてきそうな空が、兄とオブジェと白いマフラーの殺人鬼を、ひんやりと見守っている。









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